法廷に提出する証拠は、写真、映像、録音などで記録されたもので提示できる形でなければいけません。そんなとき、「ボイスレコーダーの録音データ」は証拠として有効なのでしょうか。
今回は、録音に焦点を当てて、浮気調査の証拠収集について解説していきます。
不倫や不貞行為を証明できる証拠とは?
不倫の証拠をつかむなら、法廷での証拠能力が高いものが必要です。しかも、なるべく複数の証拠があった方がよいでしょう。
よくあるものでいうと、スマートフォンの中に浮気現場や浮気相手の写真が残されていたり、カーナビの履歴には、よく利用するラブホテルが設定されていることもあります。さらに、ラブホテルを利用した時の領収書やカードの支払い明細も証拠としてある程度有効となります。
いろいろな証拠が考えられる中で、ボイスレコーダーを利用して会話を録音したいと考えることもあると思います。はたしてその証拠能力はどうなのでしょうか。
スマホやiPhoneの録音データも扱いは同様です。
録音した音声データは有力な証拠になる?
ICレコーダーやスマートフォンの録音アプリなどボイスレコーダーの音声データも、内容によっては有力な証拠となります。音声データだから証拠能力に強い弱いが生じるのではなく、どんな音声を録音したものなのかによってその証拠能力や有効性が決まるのです。
配偶者と不倫相手が会って会話をしている音声、一緒に食事をしている音声、車に乗って出かけている音声は、残念ながら録音できたとしても不倫の決定的な証拠にはなりません。
録音データの場合、不貞行為を示す音声や、不倫を認めた発言などが記録されたものなら、有力な証拠となります。
ボイスレコーダーで証拠を入手する方法
ボイスレコーダーの音声データの内、「不貞行為を示す音声」や「不倫を認めた発言」が証拠として有力なのであれば、どのような内容の音声を録音すべきかについて、「性行為の音声」「夫婦での話し合い」「不倫相手との性的関係を示す会話」の3つをあげておきましょう。
さらに、それぞれについて、どのようにボイスレコーダーを仕掛ければよいのかも解説しています。
不貞行為そのものの音声を記録する
民法第770条で、離婚の訴えを提起できる理由の一つに不貞行為があげられています。つまり、その関係が不倫なのかどうかを決定づけるのは「不貞行為」の有無なのです。
この不貞行為とは、配偶者以外の人との性行為、しかもそれは誰かに強要されたものではなく本人の自由意志による性行為のことを言います。そのため、頻繁に会っている事実や一緒に食事をしたなど、その他のさまざまな交友関係は不貞行為に該当しません。
つまり、性行為を証明する音声が不倫の証拠として有力なのです。
探偵がボイスレコーダーで録音するのは難しいです。仕掛けるには依頼者の協力が必要です。
夫婦での話し合いを記録
不倫をめぐって夫婦間で話し合われる場面があります。本来ならば十分に証拠を固めてから話し合うべきですが、理想通りに事が運ぶとは限りません。
依頼者も不倫の疑いが濃厚だという状況で毎日暮らしていると、精神的にも参ってしまいます。探偵に依頼し証拠集めをするつもりでも、思い余って相手に「不倫をしているんじゃないか」と問い詰めてしまうこともあるでしょう。そのような時は冷静な話し合いに留まらず、時には激しい口論へと発展することもあります。
配偶者も冷静に隠し通そうとしている間は、「不倫はしていない」と言い張るでしょう。しかし、話をしているうちに、心苦しくなって不倫を認めてしまったり、感情的になった上、開き直って認めたりする可能性はあります。
自白をボイスレコーダーで記録できれば、かなり有効な証拠となります。
不倫相手との肉体関係を匂わせる会話を記録する
不倫相手と単に会話をしている音声は、不倫の証拠とはなりません。しかし、肉体関係があることを匂わせる会話の場合は別です。
過去の性行為を振り返るような会話、または今後の性行為についての会話、これからラブホテルなどに向かおうとする会話や到着したことを示すような会話などは、肉体関係があることを思わせるものです。
ただし、「ちょっとした言葉遊びにすぎない」「ふざけてそんなことを言っただけ」等の弁解の余地があるだけに証拠としては最も弱いのも事実です。しかし、他のさまざまな証拠と合わせることで不貞行為が認められる可能性はあります。
レストランやカフェなど公共の場でも盛り上がって話してしまうことがあるので、油断せず準備しておくと良いでしょう。
不倫の証拠集めのためにボイスレコーダーを使う注意点
コンパクトなサイズ、細長い形状、ペン型のものまであって、不倫の証拠をこっそりと録音するのにとても便利なボイスレコーダーですが、使用する上で注意すべき点があります。
まず大前提として、録音に気づかれてはいけません。ですから、ボイスレコーダーが見つかってはいけないのです。もし気づかれてしまうと、不倫を疑って調査していることが相手に伝わり、もっと巧妙に隠蔽を図る可能性があり調査が難航することになります。
このように、見つかってしまうと危険なボイスレコーダーですが、それ以外にも次の2点に注意が必要です。
証拠として提出するには書き起こしも必要
証拠をつかんだ後、話し合いによって納得のいく結論が得られる場合もありますが、話し合いでは収まらず、法廷へと持ち込まれるケースもあります。
その場合、証拠として提出するには、音声データだけでなく反訳書面(音声を書き起こした文書)を作成する必要があります。
これは、民事訴訟規則149条で、裁判所または相手方の求めがある場合には、音声データなどは反訳書面にする必要があると定められているためです。本来は、その求めがある場合のみでよいのですが、通例では(求めがあるものとして)最初から反訳書面を作成します。
手段によっては、法律違反のリスクがある
刑事訴訟では違法収集証拠は証拠として採用されないことが知られています。しかし、不倫による離婚や慰謝料の請求など民事訴訟では、この違法収集証拠排除のルールはありません。
それならどんな手段で証拠を得ようとも大丈夫なのかというと、実はそうでもないのです。「著しく反社会的な手段・人格権侵害を伴う方法」で集められた証拠は民事訴訟でも認められません。
たとえば、依頼者自身が自宅に仕掛けるボイスレコーダーは認められても、別居中の配偶者宅では認められないなど、思わぬところにリスクが存在します。そのようなリスクを考慮せず証拠集めに夢中になっていると、たとえ夫婦であっても逆に訴えられる可能性もあるわけです。
ボイスレコーダーと証拠まとめ
ボイスレコーダーによる不倫・浮気調査は、音声データの内容によって、大変有力な証拠となる場合があります。証拠として認められるためには、性行為や性的関係を匂わせる会話、不倫の自白などの内容が必要です。
ただし、録音をするために起こした行動は配偶者に警戒感を与える結果になりかねません。証拠が必要であれば録音ではなく「撮影」を優先する方が良いでしょう。
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